睡眠時間が足りていない子どもが半数以上――。東京大と理化学研究所の大規模調査で、子どもの睡眠が不足している実態が明らかになった。塾や習い事による多忙化や夜間のスマートフォン利用などが背景にあるとみられる。特に成長期の睡眠不足は心身の発達に悪影響を与え、生活リズムの乱れから不登校につながるケースもある。学校現場では、昼寝によるリフレッシュ効果を狙った取り組みが広がっている。(江原桂都)

東大などが大規模調査

 埼玉県内に住む中学3年の男子生徒(15)は、2年の秋から夜更かしするようになった。きっかけは、手に入れたばかりのスマホだった。

10分間の「シエスタ」で睡眠や休息をとる生徒たち(2月14日、岐阜県大垣市立北中学校で)

 午後10時の就寝時間を過ぎても、ついついスマホに手が伸び、眠気は訪れない。「早く寝ないと」と焦る気持ちを紛らわせようとゲームをしてしまう。明け方になってようやく眠りにつく。生活が昼夜逆転し、3学期から不登校になった。

 3年の春に小児睡眠障害外来を受診。体内時計と24時間サイクルが合わなくなる「概日リズム睡眠障害」と診断され、2週間入院した。朝6時に起き、専用の機器が放つ強い光を浴びる。朝ご飯を食べ、スマホの利用やゲームを制限し、消灯時間を守る生活を送った。

 現在は夜に7時間眠れるようになり、今年に入ってから通学を再開した。男子生徒は「眠れず、学校に行けず、ストレスや
倦怠(けんたい)
感が増して気力がなくなった。自分の力だけでは生活を立て直せなかった」と振り返る。

小児睡眠外来の患者増

 東京大と理化学研究所の研究チームは2022年9月から小中高生計約5万人を対象に、子どもの睡眠の実態を解明する大規模調査を実施している。研究チームは今月18日、中間結果を発表した。

 研究チームによると、今年1月までに約7700人の子どもの睡眠状況を専用の機器を使って調べたところ、平均睡眠時間は小学6年生7・90時間、中学3年生7・09時間、高校3年生6・45時間で、全体の半数以上が厚生労働省が推奨する睡眠時間を満たしていなかった。

 研究チームの南陽一・東京大特任准教授は「子ども本人だけでなく、保護者にも問題の重要性を認識してもらいたい」と話す。調査は25年度まで継続して行い、結果を公表する予定だ。

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