公立中学校を中心に、部活動を民間に委ねる部活動改革が本格スタートして4月で1年となる。新たな運営のあり方を探る試みが生まれる一方、多くの自治体では議論が進んでいないのが現状だ。この1年を振り返り、専門家や教育関係者に話を聞いた。
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部活動改革
=教員の過重労働問題や少子化を受け、主に公立中学校の部活動を学校から切り離し、民間団体に委ねて新たな運営形態の構築を目指す取り組み。国は2023年度から25年度までの3年間を「改革推進期間」とし、まず休日の部活動から地域移行を本格化。将来的には平日を含めて全ての部活動の移行を目指す。
参加生徒の9割 肯定的…長崎県長与町教育長 金崎良一氏
かなさき・りょういち 長与町立3中学校で校長、長与SCのクラブマネジャーなどを務め、2022年から現職。元技術科教諭。
昨年4月、全国に先駆けて町立3中学校の休日の運動部活動を地域に移行した。地元の「長与スポーツクラブ(SC)」が運営し、住民や大学生ら約120人が時給1000円で指導する。12種目に生徒約350人が参加し、これまで大きな混乱はない。生徒へのアンケートでは肯定的な回答が9割で、「他校の友達が増えた」「専門的な指導が楽しい」などが理由に挙がった。
人口約4万人、3校が4キロ圏内にあるコンパクトさは利点だが、それだけでは実現できなかった。当初は月額3000円の会費に保護者らから「高い」と反発があり、「他の市町は学校で部活動をしているのに、なぜ変えるのか」と言われた。当然の指摘で、地域の理解が鍵だった。
2021年度に卓球部、22年度にバスケットボール部を先行して地域に委ねた。通っている学校にはない部活動に参加できるなど、生徒にとってのメリットを実際に示した。保護者らへの説明会を重ね、何度も実情を伝えて理解を広げた。
いち早く移行できた背景には少子化に対する強い危機感もあった。生徒数は3校計約1100人で、この10年で約200人も減り、そのうち1校では野球部員が3人で練習すらままならない時期もあった。「子どものスポーツ環境を守る」という一点で地域がまとまった。教員の超過勤務が繁忙期比で月に約10時間減ったが、あくまで副産物だ。
一方、今年度の事業費約2700万円のうち会費で賄えるのは6割程で、残りは国などの委託費。地域の実情に応じた対応が不可欠で、収支構造や活動内容の見直しが欠かせない。
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