東京都立
小台橋(おだいばし)
高校(足立区)は4月、新校舎へと移る。不登校の経験者を主に受け入れる「チャレンジスクール」として開校から3年目に入り、1~3年生までがそろう。節目の春を前に、生徒も教員も決意を新たにする。
◇小台橋高校の生徒は1、2年生合わせて約420人。今年度は約80人の教員が学校生活を支えてきた。保健室は心身の不調を訴える生徒に対応するだけでなく、教員たちが相談し合う場としても機能している。新入生を迎える4月からは生徒数約680人、教員約90人に増え、来春に初の卒業生を送り出す見込みだ。
開放感 オフィスの雰囲気
赤坂教諭は小旗を持って新校舎を案内した(3月中旬、小台橋高校で)
よく晴れた青空に、真っ白な壁が映えていた。
3月中旬に開かれた新校舎の「お披露目会」。教員らが手作りの小旗を持ち、生徒たちを案内する。「ここが自慢ポイント。2か所のラーニングコモンズです」。赤坂達哉教諭(44)が明るい声で盛り上げる。
ラーニングコモンズは、自習や話し合いなどで自由に使える場所。木目を基調にした内装で、各席に電源を備えた「カフェ風」、長いソファを配置した「ファミレス風」といった空間が設けられている。
改修工事を終えた新校舎は一部4階建て。プールや体育館ともつながっている
教室と廊下を隔てる壁には大きな窓があり、開放的な雰囲気だ。普通教室は青、理数系の教室は黄緑、音楽など芸術系の教室はオレンジのイメージカラーを基調にしている。職員室はカーペット敷き。生徒が気負いなく入って来られるよう、中央の通路をはさんで教員たちの机がある。
1時間かけて新校舎を見て回った2年生の男子生徒(17)は「開放的で、学校というよりオフィスや区役所といった感じ。早く使いたい」とほほえんだ。
■過去より未来
小台橋高は2022年4月、閉校した都立荒川商業高の施設を引き継いで開校した。これまでの2年は、校庭のプレハブ校舎を使用。この間に、築39年を経て老朽化した4階建ての旧荒川商校舎を、約30億円かけ改修してきた。
「これまでよりも、これから」が小台橋高のモットー。小中学校で不登校だった「過去」に縛られず再び学校に通い、ここから進学・就職していく「未来」を大切にしてほしいとの願いが込められている。
学ぶ環境からも、そんな思いが伝わってほしい――。開校の2年前、「準備室」の頃から、この学校に関わってきた杉森共和校長(60)は「中学の延長線上にある高校ではなく、生徒たちがこれから羽ばたいていく大学や企業につながるようなイメージで」と設計業者に伝えた。
草創期を見届け、今春の異動で小台橋高を離れる杉森校長は「この学校で良かったと生徒たちが思える校舎になった」と感慨深げだ。
■一歩踏み出す
小台橋高は午前と午後、夜間の3部に分かれた定時制だ。4年で卒業するのが基本だが、所属部以外の時間に授業を受けることも可能で、必要な単位を取得すれば最短3年で卒業できる。
開校時に入学したのは約220人。退学や通信制高校への転学者を除き、2年生の現在も約190人が在籍している。このうち4割が単位を順調に取得しており、3年での卒業を目指す。
その一人、2年生の女子生徒(17)。3月中旬、学習成果の発表会で体育館のステージに立った。能登半島地震のニュースを見て、災害後の暮らしの変化について調べたことを語った。
中学時代の女子生徒は体育が苦手で、人間関係にも疲れていた。それが小台橋高での2年間では、「いろんな人に会って刺激を受けた」。欠席は風邪をひいた1日だけ。卒業後は大学の看護学科に進み、助産師を目指している。
「すごく緊張した。中学の時の自分だったら、こんな発表はできなかった」と女子生徒。そして、「この学校だから、自分を変える一歩を踏み出せた。あと1年。もっと頑張りたい」と、気持ちを新たにする。
小台橋高の生徒と教員たちの挑戦は、これからも続く。(小林雄一)
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