川崎市教育委員会は22日、市立学校への企業人材の活用として、富士通(川崎市中原区)の60~65歳の社員4人を非常勤講師として任用したと発表した。4人は来年3月まで、同社での仕事と並行し、授業を担当する。文部科学省によると、民間企業に籍を置いたまま1年程度、学校現場で指導にあたる取り組みは、全国初だという。

富士通本店・川崎工場

 川崎市と同社は2014年に、ICT(情報通信技術)環境の充実や次世代育成などの分野で包括協定を締結。これまでも、同社が運営するスポーツチームの選手らが学校で教えるなど、教育分野でも連携してきた。

 今回は、シニア社員のセカンドキャリアを支援する同社が、近年の教員不足を背景に「シニア社員を非常勤講師として活用できないか」と市教委に打診し、任用が実現した。

 4人は教員免許を持たない「特別非常勤講師」として週2~4日、学校に勤務する。川崎総合科学高校に2人、川崎中学校、上丸子小学校に各1人が配属される。総合科学高校では、工業科目などで企業での経験を踏まえた指導を行うほか、川崎中では、中国在住経験がある社員が外国籍の子どもたちに日本語を指導。上丸子小では着物の着付けの資格を持つ社員が、家庭科の被服の授業を担当する。

 文科省によると、民間企業に在籍する非常勤講師はこれまで、教科の一単元など、限られた授業を担うにとどまっていたという。

 市教委の担当者は「民間企業の経験を子どもたちに還元することで、教育の多様化を目指すとともに、教員の負担軽減にもつながれば」と期待する。富士通の担当者は「シニアのセカンドキャリアと教員不足は全国的に見ても深刻だ。社員個人の可能性を広げる選択肢にもなると思うので、今回の取り組みを機に、他自治体でも検討していきたい」としている。