東京都が今年度から高校の授業料を実質無償化するなど、隣県との「教育格差」の拡大が懸念されている。事態を重く見た神奈川、埼玉、千葉の3県知事は7日に文部科学省などを訪れ、国主導の「子ども施策」の充実を直談判し、危機感をあらわにする。(井美奈子)

教育の地域間格差解消を訴える神奈川県の黒岩知事(手前)ら3県の知事(7日、総務省で)

 「財政力の違いは圧倒的。東京都と同じことを実現しようと思うと財源が必要で、とても太刀打ちできない」

 神奈川県の黒岩知事は千葉県の熊谷俊人知事、埼玉県の大野元裕知事と文科省や総務省などを訪れ、居住地域にとらわれない子ども施策の実現と、税源の偏在是正を求める要望書を提出した。大臣らとの面会後、黒岩氏はこう語気を強める一方、「東京とケンカしているわけでない。国のシステムがおかしい」とも述べ、直接的な「都批判」は避けた。

 盛山文科相は要望に対し、「何ができるか検討したい」と理解を示したという。

 黒岩氏が千葉、埼玉県知事と足並みをそろえる背景には、同じ通学・通勤圏にありながら、豊富な税収で次々と子育て政策を打ち出せる都の財政状況への強い反発がある。

 昨年末、小池百合子知事は都内在住の高校生を対象に、それまで年収910万円未満の世帯に限っていた所得制限を撤廃し、私立高も含めた授業料の実質無償化を表明。今年4月から、都内私立高の年間平均授業料48万4000円を上限とする補助がスタートした。18歳までの子どもへの月5000円給付などもあり、子育て世帯には大きな反響を呼んでいる。

 補助は都内在住の生徒が神奈川県内の私立高に通う場合も適用されるため、「クラスの3分の1が都から来ている学校もあり、同じクラスで支援のあり方が違うのはおかしい」(黒岩氏)と不公平感が募っている。

 ただ、東京都との財政規模の違いは歴然だ。今年度当初予算の一般会計総額は、神奈川県の2兆1045億円に対し、東京都は4倍の8兆4530億円。都の人口は1・5倍程度で、1人あたりに占める予算規模には隔たりがある。また、神奈川県の予算は人件費などの義務的経費が8割を占め、政策に重きを置きにくい。数値が高いほど自由に使える財源が少ないことを示す「経常収支比率」は、2022年度に神奈川県98・5%、東京都79・5%だった。

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