文部科学省は、一部保護者からの学校への不当な要求や苦情に対応するため、校長OBらを教育委員会に配置し、学校を支援する体制を整備する。校長OBらが保護者と学校の間に入って調整を図り、解決へと導く。保護者対応は教員の負担増の一因になっているとの指摘もあり、国が本格的な支援に乗り出す。
文科省は今年度、17市区町村と6都道府県の教委で体制整備のモデル事業を始める。将来的には全国で展開したい考えだ。
文科省が教委に配置するのは、「学校問題解決支援コーディネーター(仮称)」。学校運営や保護者対応に詳しい校長や教頭・副校長ら管理職経験者を想定している。市区町村教委などに常駐し、学校と保護者との間でトラブルが起こった際に双方から事情を聞き、解決策を提示する。内容によっては、弁護士や医師など外部の専門家とも連携を図り、対応に当たる。
学校に過度な要求をする保護者は一部でみられる。ある自治体では、子どもが家の壁を蹴って穴を開けたことで教員を自宅に呼びつけたり、3か月間ほぼ毎晩学校に来て生徒対応への不満を訴えたりしたという。
保護者対応を巡っては、東京都教委は2009年度から「学校問題解決サポートセンター」を開設し、校長OBらが電話で保護者や学校からの相談を受け付けている。センターの担当者は「現場で長い勤務経験がある管理職経験者は学校や保護者の事情に詳しく、実情に即した対応ができる」と話す。
学校現場では近年、団塊世代の教員が一斉退職して若手の教員が増え、ベテランからノウハウを教わる機会が減っている。文科省の調査によると、精神疾患で1か月以上休んだ20~30歳代の教員(休職者を含む)は22年度に約6500人で、5年で倍近くに増えた。
同省の担当者は「保護者対応は、若手教員の心理的負担の一つとなっている。保護者からの要望は本来、学校が信頼関係を築きながら応えていくものだが、行きすぎた主張は別で、支援体制を強化する必要がある」としている。