群馬県教育委員会は、公立小中学校で2学期が始まる9月にも、約10校の図画工作と美術の授業で対話型生成AI(人工知能)を活用する。県教委が授業で生成AIを使うのは初めて。専門性が高く指導が難しい科目に導入することで、教員の負担軽減を図りつつ、子どもたちの個性を伸ばすことを目指す。
県教委が主な使い方として想定するのは、子どもの個性や関心を引き出すため、児童生徒と生成AIが対話をする方法だ。子どもたちが作品を作ろうとする際、タブレット端末で疑問を書き込むと、AIは「なぜそう思ったの?」「何が好きなの?」と対応。質問に対して画一的な答えを教えるのではなく、子どもが自ら答えを出すように促す。
県教委によると、小学校では教員免許が科目ごとに分かれていないため、図工に関しては教員の指導力の差が大きい。中学校の美術については専門の免許を持っている教員が少ないという課題がある。
県教委は「教員が主観に基づいて指導すると、子どもが自分で考えて制作できなかったり、作品の見栄えを優先して制作過程をおろそかにしたりする可能性もある」と懸念。生成AIの活用で、適切な指導のあり方を教員が学ぶことも期待している。
県は、タブレット端末で著名な画家や作品を学べる「デジタルドリル」などと合わせた事業費5000万円を今年度一般会計補正予算案に盛り込み、開会中の県議会に提出している。可決されれば、2学期から公立小中学校約10校で試験導入し、効果を検証しながら各校に広げていく考えだ。
一方、様々な著作物について学習する生成AIを巡っては、著作権を侵害するリスクも懸念されている。県教委は、今回導入予定の生成AIは画像を提示せず、文章のみでやりとりする点などから著作権侵害のリスクは低いとしつつ、「開発業者と相談しながらシステムを作っていく」とする。また、国語や算数といった他の科目への導入も視野に入れているという。
県教委総務課は「作品の完成度や技能、知識の習得ばかりを求めるのではなく、子どもの思考を深められる授業にするための支援にしたい」としている。