「なぜ生きるのか」「どうして学校に通うのか」。正解が一つではない問いは世の中にあふれていますが、そんな課題に真剣に向き合い、意見を出し合う「哲学対話」という取り組みを行う学校があります。埼玉県内有数の進学校、
開智(かいち)
中学・高校(さいたま市)を訪ねました。
哲学対話の様子
「正しさと優しさはどっちが大切か?」。5月のある日、中学1年生の教室を訪ねると、こんなテーマで「哲学対話」が行われていました。生徒は輪になって座り、手を挙げるとボールが手渡され、意見を発表します。
「正しさが大事だと思う。優しさを優先すると、
安易(あんい)
に人にお金を貸すなど自分に害が及ぶ可能性がある」。そう話す生徒もいれば、「正しさも優しさも自己満足では。どちらも相手に届くとは限らない」と、異なる視点からの意見を述べる生徒も。初めて体験した青井竜之介君(12)は「普段から答えのない問いについて考えることが好きなので、楽しかった」と笑顔で話していました。
「哲学対話」とは、特定のテーマについて生徒たちに考えてもらう取り組みです。中学の道徳の授業の一環として、2012年度から行われています。必ず意見を言う必要はなく、全体で話し合って結論を出すこともありません。担当の広畑光希先生(29)は「じっくりと考えを深めてもらうことが目的。目には見えないところで、生徒に変化があると信じてやっています」と語ります。
哲学対話の魅力について語り合う(左から)鳴海さん、石井さん、中村さん
実際、経験したことで変化はあったのでしょうか。高校2年の石井
紬希(つむぎ)
さん(16)、
鳴海紗弥(なるみさや)
さん(17)、中村
佳穎(かえ)
さん(17)に聞いてみました。
石井さんは「友だちが違う意見を持っていると『なぜそう思うのか』まで知りたいと思うようになった」と話し、鳴海さんも「異なる意見に触れた時、掘り下げて考え続けることの楽しさを知った」と言います。中村さんは「日常では触れないようなことを奥深く考えられるのが、哲学対話の良いところ」と振り返ります。こうした魅力に触れ、自主的に「哲学対話」を続ける卒業生もいるそうです。
(全文は読売中高生新聞6月7日号掲載、購読は
こちら
)
学校プロフィル
【生徒数】
中学:876人、高校:1072人
【歴史】
1997年に創立。校名の名付け親はノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智さん
【高校卒業後の進路】
多くが難関大を目指す。2023年度は東大に7人合格。医学部医学科に62人が合格した