文部科学省は、株式会社が運営する通信制高校について、開設時の審査を厳しくするなど規制を強化する方針を決めた。複数の通信制高校で法令違反や不適切な教育内容が判明したことを受け、教育の質を確保する必要があると判断した。
文部科学省
株式会社による通信制高校の開設は、小泉政権下の2003年度から構造改革特区に限り認められた。文科省によると、今年4月時点で全国に計15校ある。公立や私立の通信制高校と同様に、生徒が自宅で添削課題に取り組み、学校で対面指導を受ける。
文科省と内閣府が昨年、株式会社立の全通信制高校を調査した結果、過半数の高校で職員配置に関する法令違反や不適切な教育活動が確認された。具体的には、教科の免許を持たない教員が対面指導をしたり、極めて簡単な試験内容で単位を認定したりしていた。
株式会社立の通信制高校を巡っては、15年に「ウィッツ青山学園高校」(三重、17年閉校)による国の就学支援金の不正受給事件が発覚。その後もずさんな学校運営が相次いで見つかっており、構造改革特区に申請する自治体の指導監督が十分に機能していないことが背景にあるとみられる。
そのため、同省は今後、自治体に対し、高校教育に詳しい職員を雇用したり、点検のための巡回を強化したりといった対応を求める。同省は指導監督体制が不十分な場合は、特区の認定に同意しないようにする。
また、株式会社が運営する通信制高校で法令違反や不適切な事例が確認された場合は、定員増や別の特区での新設を認めない。
近年、通信制高校は不登校生徒や中退者の受け皿のほか、スポーツや芸能活動に打ち込む生徒の学びの場としてのニーズが高まっている。通信制の生徒数は全高校生約290万人の1割弱にあたる。