公立学校の教員採用試験の前倒しが進み、16日には九州地方を中心に全国10以上の教育委員会で実施された。民間企業の採用時期の早期化を踏まえ、文部科学省は従来より1か月ほど早い「6月16日」に実施するよう教委に求めていた。都道府県・政令市などの全68教委のうち、同日以前に試験日を設定したのは、過半数の36教委に上った。
教員採用試験はこれまで7月に1次(筆記)が始まり、8月に2次(面接)、9~10月に合格発表という日程が一般的だった。だが、公立学校の志願者数が大きく落ち込むなか、民間への流出を食い止めようと、文科省は6月16日を実施日の目安として教委に示していた。
16日午前、佐賀県内の2か所の会場で教員採用試験の1次試験が始まった。佐賀県教委によると、今年度の志願者数は前年度比17人増の764人。うち今年度卒業見込みの新卒者は344人で34人増えた。
受験した佐賀大教育学部4年の男性(21)は「早い時期に民間企業から内定をもらう友人もおり、不安に感じていたので試験の前倒しはうれしい」と話した。一方、1次試験の直前まで教育実習を受けていた私立大4年の女性(22)は「教育実習の準備などで忙しく、試験勉強をする時間の確保が難しかった」と語った。
志願者数大幅増の自治体も
採用試験の早期化で新卒の志願者数を大幅に増やした自治体もある。静岡県教委は今年、2か月前倒しして5月11日に試験を実施したところ、新卒が150人伸びた。だが、今月15日に行った三重県教委は全体の志願者数が142人減り、担当者は「早期化による効果を検証する必要がある」とした。
東北6県と仙台市は、ほぼ例年通りの7月13日に実施する。教育実習の期間を避けたことを理由の一つに挙げた。
文科省は来年度について、今年度よりさらに1か月ほど早い5月11日を目安として示している。
教員採用に詳しい東京学芸大の鈴木聡副学長は「試験日の前倒しは、教職を選択肢の一つとする学生が受けてみようと思う動機付けになりうる。ただ、教育実習の時期が試験と重ならないようにするなど受験生への配慮が必要だ」と指摘している。