東京女子医科大(東京都新宿区)が、医学部卒業生の子女らを対象にした推薦入試で、受験生の親族から寄付金を受け取っていたことがわかった。出願資格を審査した同大の同窓会組織「至誠会」も寄付を受けており、受験生側から両法人への入試時期の寄付額は、2018~22年の5年間で少なくとも約3400万円に上った。文部科学省は入学に関する寄付金の収受を禁じており、同大に報告を求めている。

同窓会組織が出願資格を審査

 問題の入試は、3親等以内に至誠会の会員(卒業生)か準会員(在校生)がおり、同会の推薦を受けた生徒が対象で18年に始まった。同会は毎年9月初め頃に推薦依頼の受け付けを開始。同月下旬に筆記と面接の試験を行い、東京女子医大に推薦する受験生を10人程度選んでいた。推薦を得た生徒は11月に同大で試験を受け、合否が決まる仕組みだった。

「推薦審査依頼書」には寄付の実績を申告させる欄があった「推薦審査依頼書」には寄付の実績を申告させる欄があった

 同大などによると、18~22年の5年間で、生徒計57人が至誠会に審査を申請。7割弱の39人が大学に推薦され、最終的に37人が合格した。合格率は95%だった。

 関係者によると、生徒が至誠会に提出する「推薦審査依頼書」には、同大や同会への寄付の実績を申告させる記入欄があった。

 読売新聞が内部資料を分析したところ、同大は18~22年、推薦審査の受け付け開始約1か月前の8月から合格発表の12月初旬に、少なくとも生徒8人の親族から計1630万円の寄付を受領。同会も同時期に同18人の親族から計1800万円の寄付を得ていた。4人の親族は双方に寄付していた。

寄付額を「貢献度」として点数化

 19、20、22年の推薦審査では、寄付額を「貢献度」として点数化し、面接や筆記などの結果と合わせた得点表が作成されていた。

 推薦審査は、同大理事を兼務する至誠会理事らが担当。18年は同会代表理事で大学副理事長だった同大の岩本絹子理事長(77)も面接を担当していた。

 岩本氏は昨年4月、至誠会の代表理事を解任され、同大は今年度から、子女枠の推薦入試に至誠会が関与しない仕組みに変更した。

 文部科学省は02年10月の事務次官通知で、私大の入学に関して寄付金を収受することなどを禁止している。今回の問題は今年4月頃に把握し、同大に調査結果を報告するよう求めたという。

 同大は取材に対し、「特定の個人に対し、寄付を求めた事実はなく、文部科学省の通知に違反しているとの認識もない」などと文書で回答した。