子どもと接する職場で働く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」について、読売新聞は、制度参加が任意とされた民間の事業者で学習塾を経営する大手50社を対象にアンケートを実施した。回答した37社のうち、9割弱にあたる32社が参加に前向きで、20社が民間も義務化することを望んだ。

 日本版DBSは、学校や塾などで働く人の性犯罪歴を、雇用主が政府に確認し、犯歴があった場合に就労を制限する仕組み。制度創設を盛り込んだ「こども性暴力防止法」が今月19日に成立した。学校や保育所には制度参加を義務付け、任意とされた民間事業者に、どの程度、参加が広がるのかは関心事となっている。

 アンケートは5月下旬~6月中旬、全国私塾情報センター(東京)が発行する「学習塾白書」の2023年版から、売り上げ順で上位50社を対象に行った。

 回答した37社のうち、DBS制度に「参加する」と答えたのは9社。「参加する方向で検討中」の23社と合わせ、32社が参加に前向きだった。「生徒・保護者の安心感につながる」「(就労者の)適性を判断する上で性犯罪歴を把握することは必要だ」といった理由が多かった。

 アンケートでは、DBS制度の参加が任意とされたことの評価も尋ねた。37社中20社が「義務化が望ましい」と答えた。「教育活動を行うのは民間も公教育も差がなく、どのような立場でも責任を負う義務がある」といった意見が目立った。性犯罪歴を持つ人が制度に参加しない民間の事業者に流れると、子どものそばで働くことを完全には防げず、「抜け道」になるとの指摘が背景にあるとみられる。

 アンケートに未回答だったのは13社で、一部事業者は取材に「対応を検討中」「情報収集の段階」とした。

 このほか、読売新聞は水泳と英会話、音楽教室、学童保育を運営する民間の大手事業者20社にもアンケートを実施。14社から回答が得られ、DBS制度に「参加する」(1社)と「参加する方向で検討中」(9社)を合わせ、計10社が参加に前向きだった。

 調査結果について、子どもへの性犯罪や虐待の防止に取り組むNPO法人「シンクキッズ」(東京)代表理事の後藤啓二弁護士は「民間事業者がDBS制度への参加を前向きに検討していることは評価したい。『抜け道』のないよう、国は義務化や照会期間の拡充などの検討を続ける必要がある」と話している。

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日本版DBS
=学校や塾などで働く人の性犯罪歴を確認し、犯歴があった場合に就労を制限する制度。性犯罪歴の照会期間を最長20年としている。英国DBS=Disclosure and Barring Service(前歴開示・前歴者就業制限機構)=の犯罪歴照会制度がモデル。