大阪府立佐野工科高校が先月導入
校外での体験活動を行うことを前提に、平日に学校を休む「ラーケーション」を、大阪府立佐野工科高校(泉佐野市)が先月、府立高で初めて導入した。就業体験や資格の取得などに取り組むことが推奨され、生徒の自主性を尊重して、保護者の同伴を求めない点が同校の特色だ。就職する卒業生のキャリア支援につなげる狙いがある。(三浦孝仁)
「ただ休むのではなく、授業でできない学びの体験を考えてほしい」
「一人で計画して旅行に行きたい」「小説を書いてみようかな」「興味のある大学を見学しよう」
ラーケーション導入を控えた5月下旬、ボランティアなど課外活動に取り組む「創造部」の部員ら5人が、教員の説明を受けながら意見を交わした。1人の3年生(17)は「自由な発想で興味のあることに取り組めるのがうれしい。企業に飛び込んで技術を教わりたい」と話した。
同校は電気や機械の技術などを学ぶ工業系高校で約590人が在籍。例年、卒業生の4割が大学や専門学校などに進み、6割は就職する。ラーケーション導入は、授業以外の活動を通して進路選択を主体的に考えてもらうためだ。
ラーケーションを取得したい生徒はまず、休みの日程や活動内容について保護者の了解を得る。1週間前までにアプリを使った「欠席連絡システム」で申請。教諭の助言を受けた上で当日を迎える。年10日まで休めて、土日や祝日と組み合わせることもできる。
出席停止と同様の扱いとされ、欠席にはならない。出席できない授業は学習用の動画やプリントなどで補う。
学校が想定する活動は、地元企業での就業体験や地域でのボランティア活動、資格取得、リゾート施設でのアルバイト、単独旅行など。松野良彦校長は「取得の目的や計画が大切。保護者とよく話し合い、進路選択に役立つ体験に活用してほしい」と期待する。
取得率3割超え 愛知県昨年9月導入
他地域に先駆け、昨年9月にラーケーションを導入した愛知県。その背景には地域特有の働き方がある。
同県は自動車関連の会社が多く、製造業で働く人が就労者の4分の1を占める。祝日に工場を稼働して、従業員の休みを平日に振り替えると、子どもと休みを合わせられなくなることがあった。
製造業の他にも土日に休みづらい職種があり、そうした課題の解決に県がラーケーション導入を掲げたところ、名古屋市を除く53市町村が賛同。公立の小中高校、特別支援学校が対象で、申請すれば、保護者の休みに合わせ年3日まで平日に学校を休める。県教委が参加校に平日休の取得状況を調査したところ、小中学生の取得と取得予定は計35.4%、高校生は計30.9%と3割を超えた。
一方で、調査では高校生がラーケーションで負担に感じることに「受けられなかった授業を自習などで補う」(41.3%)を挙げ、「授業の遅れが心配で取れない」との意見もあった。