日本語に不慣れな外国人の児童生徒の学習環境を整えようと、神戸市教育委員会は今年度、授業通訳支援ツール「ポケトークforスクール」を全国で初めて導入した。教員が話す日本語を瞬時に翻訳し、児童生徒の手元の学習用端末に母国語で表示するもの。市によると、自治体では初の取り組みといい、少しでも早く日本での学校生活になじめるようサポートしていく。(高田果歩)

 「共通点を分類して」「情報を整理して」。市立義務教育学校港島学園(中央区)の7年生(中学1年)の教室で行われていた国語の授業。室之園裕美教諭(48)が日本語で説明すると、生徒の手元の学習用端末に同時通訳で中国語が表示された。

 中国籍の生徒(13)は指示を理解した様子で、クラスメートの助けを借りながらワークシートに取り組んだ。生徒は「とても便利」と喜ぶ。室之園教諭も「みんなと同じように授業を受けられることで、クラスに溶け込みやすくなっている」と効果を感じている。

 導入したのは、自動翻訳機の製造販売会社「ポケトーク」(東京)が教育機関向けに開発したサービス。小型マイクを通した教員の言葉を同時通訳するもので、74の言語に対応している。今年3月に4校で試験導入し、5月から小、中、義務教育学校の計19校で活用を始めた。母国語で文章を読めることが必要なため、小学4年生以上を対象に、利用は原則、来日後最初の1学期間を想定している。

 神戸市によると、市内在住の外国人は今年4月時点で約5万6300人で、2015年から約1・3倍に増加。外国籍の児童生徒は62か国約1700人おり、そのうち、日本語での学習が難しい児童生徒は15年と比べて約1・7倍となる657人に上るという。

 市教委によると、外国籍の児童生徒らの学校園での生活支援は、主に「ランゲージ支援員」が付き添っている。だが、近年は日本語指導を必要とする児童生徒は増加傾向にあり、支援員が不足。各校は小型自動翻訳機も活用してきたが、同時通訳機能がなく、支援員不在時の学習支援が課題となっていた。

 市教委は今後、各校の活用状況を踏まえて、導入校を増やすことも検討しているという。

日本語教学べる教室も

 市教委は、学校生活に必要な日本語の習得支援として、来日まもない児童生徒向けの教室「日本語ひろば」を開講している。

 平日午前3時間の11日間連続講座で、市総合教育センター(中央区)で実施。今年度は11回を予定し、日本語指導の資格を持つ支援員が講師を務める。6月中旬から始まった4回目の講座には、ベトナムやネパール、中国、インド出身の児童6人が参加。講座では簡単なあいさつやひらがな、数字の読み方をゲームを交えて楽しく学んでいた。

 ベトナムから5月に来日した小学4年の男子児童(9)は「たくさん友達をつくっておしゃべりできるように、日本語を頑張る」と意気込む。小学2年の娘が受講しているインド国籍の会社員(35)は「家族でも日本語で会話する時間をつくりたい」と話していた。