大型連休が明けてから1か月がたつ。「五月病」にかかってしまった方は、本調子に戻られただろうか。
手元の辞書は、「新年度の4月に入学・入社した新人に、5月ごろになると現れる精神の不安定状態をいう」と解説している。もともとは、ハードな受験戦争を終えた学生が、大学入学後に目的意識を失って放心する様子を指したというが、今では社会全般で見られる現象だ。
最近では、「精神の不安定」にとどまらず、退職にまで追い込まれる新入社員も多いという。本人に代わって退職の意思を伝える「退職代行」というサービスが大忙しだというニュースまである。
こうした離職の原因は、連休明けに陥る
憂(ゆう)鬱(うつ)
だけでなく、入社後の職場で感じたギャップも大きいようだ。
企業組織の変革をサポートするユニポス(東京都)が今年2月に実施した調査(会社員550人が回答)によると、入社前に自分が思っていた「企業風土・カルチャー」と、入社後の認識にズレ(ギャップ)があったと感じた人は61・9%に達した。
調査対象者のうち65・5%は転職を経験しているが、うち「企業風土・カルチャーが退職の要因だった」と振り返った人は59・8%に上った。収入など待遇面だけでは測れない距離感が、離職を選ばせてしまったということだろうか。
求人サイトを運営するエン・ジャパン(東京都)が昨夏に実施した調査(同社の派遣求職サイトの利用者2626人が回答)では、入社後に仕事内容や職場の雰囲気などでギャップを感じたことがある人は79%に上ったといい、うち55%はギャップが原因で仕事を辞めたことがあるという。
同社によると、新入社員が入社3か月で離職した場合の企業側の損失は、1人あたり187万円に上る。入社後の心理状況の変化を回答してもらい、不幸な離職に至らないようフォローするサービスが、多くの企業に受け入れられているという。
こうした入社後ギャップを解消するにはどうすればよいか。大手金融企業の人事担当・Kさんが心がけるのは、長い就職活動期間を通じ、現場で働く社員との接点を増やすことだという。「入社後に、『思っていた会社と違った』と言われるのを減らすため、会社の業務、風土、雰囲気を理解してもらうのが一番です」と語る。
ただ、Kさんが働くのは、モーレツ営業で知られた体育会系の業界だったはず。筆者も何年か取材した経験上、入社後には厳しい洗礼が待っているのではないかと想像するが……。
「確かに、かつては収益を上げるかどうかが評価基準でした。しかし今は、お客さまのことを考えられない社員は評価されません。会社全体が変化しており、求める人材像も変化しています」とKさん。
「楽しく、笑いながら」進める面接では、コミュニケーションの中からにじみ出る「人柄」を見極めるのだという。就職活動を続けている学生の皆さんも、「この職場で気持ちよく働くことができるのか」をよく見極めて企業を選んでほしい。
かまた・ひでお
)
就活会員募集中
読売新聞オンラインの就活会員になると、ほぼすべての記事が半年間、無料で閲覧できます。登録は
こちら
から。