夏のインターンシップ(就業体験)がピークを迎えている。インターンから就職活動を始める学生は多いが、「なんとなく」「周囲もやっているから」と漫然と参加していないだろうか。「なぜ参加するのか?」「どう活用したらいいのか?」。貴重な体験を生かすために、3人の識者に疑問をぶつけ、助言を求めた。(江原桂都)
元リクの熱血キャリセン職員
淡野健
さん(62)
リクルートで広告営業や新卒採用などを担当。起業を経て、2010年から母校の学習院大キャリアセンターに勤める。学生と、テニスや野球などのスポーツをこよなく愛する。
インターン歴4年半 最強OG
トテ・ジェニファー麻綾
さん(23)
高3から複数のインターンに参加し、大学在学中に「学生がキャリアアップするためのインターンシップ活用術」(総合法令出版)を出版。今春、外資系大手IT企業に入社。
ほほ笑み就活プロフェッサー
岡崎浩二
さん(43)
東京都立産業技術大学院大特任准教授の顔を持つキャリアコンサルタント。全国10大学で就職を支援し、AI選考など最新技術に詳しい。笑顔で学生に寄り添う。
準備
Q どう選べばよい?
淡野
インターンは、就活に必要な「多様な企業、仕事、人を知る」手段の一つ。気になる企業がなければ、「目に留まった」など偶発的な出会いで選んでよし
トテ
自分がやってみたいことを優先。オンラインより対面がよい。休憩中や終了後の時間も質問などに利用できる。短期間だと説明会以上の経験が得られない。最低3日はほしい
岡崎
単純に興味のある企業でOK。セミナーや説明会から参加することで、好き嫌いや向き不向きもわかる。志望先の選考が高倍率なら、グループ会社や子会社も選択肢に
Q 選考に落ちたら本選考で不利になる?
岡崎
原則は影響ない。インターンに落ちた人を対象にした説明会などもある。気にせず、どんどんチャレンジしよう
淡野
本当のところはブラックボックス。不安なら参加を見送り、自信をつけてから秋・冬のインターンに参加する選択肢もある
トテ
一概に有利不利は言えない。実際に内定直結や、参加後に選考の一部が省略されたりするものもある。志望先のインターンがどのようなものか情報収集しよう
Q 落ちるのが怖くて応募できない
淡野
参加できそうな企業や業界を選べばいい。「みんなが行くから」という理由なら無理に参加する必要はない。参加目的を明確にして臨もう
参加中
Q 何を心がけたらいい?
トテ
自分の働く姿をイメージする。私は価値観と年齢の近い入社1~3年目の社員に質問して、イメージに違和感がわかないかを確認していた。「学生に戻れたら、もう一度この会社に入社したいですか?」など、全社共通の質問も用意して他社と比較した
グループワークは全員で勝ちに行く気持ちだと班全体の雰囲気が良くなる。誰かを蹴落とそうとする気持ちは自分の足も引っ張る
質問は工夫する。気になるからと「福利厚生」「年休・有休」などを根掘り葉掘り聞くと、敬遠される。例えば「お盆休みや年末年始はどのように過ごしていますか?」と尋ねれば、実態はわかる
Q 知り合った社員にもっと話を聞いてみたい
岡崎
名刺をもらったら、早めにあいさつやお礼のメールをしておこう。人事担当者に仲介をお願いしてもいい
Q しておいたらいいことは?
トテ
就活中はエクセルで企業名や志望度、各種応募締め切りなど情報を一覧化した「選考管理シート」を作っていた。社員からのフィードバックがあれば、それも記入していた
参加後
Q どう生かせばいい?
岡崎
参加後すぐは記憶も感情も新鮮だ。「どこが合う」「なぜ合わない」を言語化しよう。見切りをつける企業も含めて、考えを深めることで会社選びの基準が見えてくる
淡野
失敗したと思っても、力が足りていないことや未熟な部分に早い段階で気づけて良かった。就活はこれからだ。食わず嫌いをせず、他の業界や企業に手を伸ばしてもいい
Q 志望度低めの企業から参加者限定の「秋の特別インターンの案内」が届いた
岡崎
参加した方がよい。評価されているので、秋も選考通過の可能性が高く、企業の新しい一面が見つかるかも知れない。基本は「受かってから悩む」。選択肢は狭めない
トテ
社会人と話すことに慣れるのは大切。場数を踏むいい機会。大学の友人とは別に、同じ志を持つ就活仲間ができるかも知れない
Q 疲れた。やる気が上がらない
岡崎
インターンは受けただけで偉い。100点満点。就活は長期化もしているので、上手な気分転換も覚えたい
人事担当者のつぶやき「見えているよ…!」
「社員へのアピールを意識しすぎて、ワーク中に社員がいるかどうかでギアが違う学生が結構いる」(ITベンチャー)
「社員への態度と就活仲間への態度で違いのある学生は印象が悪い。休憩中の言動も目につく」(大手損保)
「質問はすればするほどいいと勘違い。採用サイトや説明会資料に書いてあることを聞くのは、調べ不足でむしろ減点」(コンサル)
最後にひと言メッセージ
淡野
学生の夏にしかできないバイトや旅などにもぜひ、挑戦して
トテ
感覚をつかむために一定量をこなそう。ただし、追い込み過ぎには注意
岡崎
学業を優先し、余裕があればチャレンジする気持ちで大丈夫