宮城県教育委員会は9月下旬にも、定期試験などの答案をAI(人工知能)が自動で採点するシステムを県立高全70校に導入する。教員が残業を余儀なくされる理由の一つである採点作業の負担を軽減するのが狙いで、採点にかかる時間を半減できると試算している。先生が赤ペンで丸をつけた答案を生徒に返す光景も、働き方改革を機に徐々に見られなくなるかもしれない。

 自動採点システムは全生徒の答案を一度にスキャンし、ソフトウェアを導入したパソコンに読み込ませる。選択式や簡単な記述で答える設問は正答を設定すれば、AIが画像を認識して自動で「〇」か「×」をつける。複雑な記述問題は教員自身が画面上の「△」ボタンなどを押し、「部分点」を直接入力する。

 教員は設問ごとに抽出した各生徒の解答を画面上の一覧で見られるため、自動採点に誤りがないか効率的にチェックできるほか、全生徒の平均点や設問ごとの正答率を把握しやすい。

 生徒への答案返却は、スキャンした答案に「〇」や点数を印字したデータをタブレット端末で共有したり、印刷して答案原本とともに返したりする方法が想定されているという。

 県教委は定期試験のほか、2026年4月入学者の入試でも導入を目指している。

月80時間超残業29・5%

 なり手不足が深刻化する教員の負担軽減は喫緊の課題となっている。文部科学省は29日、教員の働き方改革推進本部を設置し、校務のデジタル化などを盛り込んだ改革案を公表した。

 県内の教職員で月80時間以上の残業を経験したことがある人の割合は、2023年度の県立高で29・5%に上り、県教委は27年度までにこれをゼロにする目標を掲げている。公立校の教員は、残業代の代わりに基本給の4%の「教職調整額」が一律支給される仕組みで、残業時間に応じた手当は原則ない。

 自動採点システムは先行導入している岡山県立高で、1教科あたり8時間弱かかっていた採点作業が約4時間に短縮したという。

 宮城県教委高校教育課は「時間外勤務となりがちだった採点業務が効率化され、教員が働きやすい環境作りにつながれば」と期待している。