文部科学省が、大学図書館が保有する書籍や資料などをデジタル化し、学生や研究者らがいつでも利用できる「デジタルライブラリー」の構築に乗り出す。全国の大学図書館をインターネット上で結ぶ「図書館ネットワーク」と言えるもので、実現すれば自宅などからの利用が可能となる。2030年までの導入を目指す。
文部科学省
従来の来館型のサービスに加え、利便性の向上を図る狙いがある。26年度から5年間の科学技術政策の指針となる「第7期科学技術・イノベーション基本計画」に盛り込む方向だ。
デジタル化の取り組みは大学ごとに濃淡があるため、システムの統一化などを検討する。今年度から各大学のデジタル化の実態調査と支援策の検討に入り、25年度からは出版社などとも連携し、利用者が少ないために遅れが指摘されている学術書などのデジタル化にも取り組みたい考えだ。
背景には、専門書が豊富な大学図書館の需要の高まりがある。主に学生や研究者が図書館を訪れて利用しているが、社会人の学び直しなど「リスキリング・リカレント教育」の広がりでオンラインで利用したいとの声も高まっていた。新型コロナウイルス禍では休館を強いられたことで、教育や研究活動に支障が出たとの反省も踏まえた。
デジタル化を進めている国立国会図書館との連携も視野に入れている。情報検索機能を持たせるほか、著作者の権利を侵害しないよう、著作権や知的財産の専門人材も育成し、大学図書館に配置する方針だ。
近年は研究データを広く公開することで、新たな技術革新につなげる「オープンサイエンス」の考え方が重視されている。政府は国の予算で行う研究の学術論文を25年度から無料で公開することを義務づける方針を決めているが、対象外となっている研究データの公開も促し、デジタルライブラリーで閲覧できるようにすることも検討している。