訪日外国人客の増加や円安の影響を受け、中学や高校の修学旅行が変わり始めている。定番の「京都」や海外渡航を回避する動きが出てきた。別の行き先を考える学校が半数に上るという調査結果もあり、修学旅行の多様化が進みそうだ。

 「人気の神社仏閣を以前のようには回れなくなった」

 東京都八王子市立上柚木中学校の三田村裕校長(64)は、9月に修学旅行で訪れた京都の街を振り返った。バス停には長蛇の列ができ、清水寺や伏見稲荷大社は訪日客でひしめき合っていた。

 全国修学旅行研究協会の2023年度調査では、関東地区の公立中学校の9割が近畿方面への修学旅行を実施した。ただ、54%が今後は別の修学旅行先を検討したいとして、北陸や東北などを挙げた。混雑する観光地では見学先を減らさざるを得ず、以前のような学習効果を期待できないことなどが理由とみられる。

清水寺の周辺では、修学旅行の生徒が外国人観光客の間を縫うように歩いていた(8日、京都市東山区)=川崎公太撮影清水寺の周辺では、修学旅行の生徒が外国人観光客の間を縫うように歩いていた(8日、京都市東山区)=川崎公太撮影

 上柚木中も来年度の行き先を被爆地の長崎に変更した。三田村校長は「国際情勢が緊迫するなか、平和教育に力を入れたい」と語る。2年生の男子生徒(13)は「長崎の歴史や文化を勉強したい」と話した。

円安、海外も回避

 一方、海外渡航はコロナ禍で途絶え、その後も円安や燃料費の高騰などで戻っていない。JTB(東京)によると、コロナ禍前に海外への修学旅行を実施していた学校の45%が国内に振り替えたままだ。

 福島県矢祭町も約25年間、中学3年生のオーストラリアへの修学旅行代の多くを負担してきたが、旅費の高騰で断念している。

 修学旅行も、従来の見学型から、探究や体験を増やす流れへと変わってきた。現行の学習指導要領で「探究的な学び」が重視されたことが背景にある。

 東京都立八潮高校の生徒は今月、3泊4日で北陸などを巡った。福井県民の幸福度が日本1位とされるが、観光客が少ないという課題をテーマに探究学習を行い、民泊も体験した。

 受け入れる自治体も、行動の分散化や体験プログラムの実施を促す。

 沖縄県は、団体客が集中する10~12月にバスの利用を減らし、観光地以外で体験プログラムを実施した場合などに生徒1人最大1万円を学校に助成する。京都市も昨年度から、閑散期に宿泊する学校に対し、
舞妓(まいこ)
の舞踊観賞と交流の体験学習を無料で提供している。

 日本修学旅行協会の竹内秀一理事長(71)は「各学校の教育目標や探究、体験の大切さを踏まえれば、必然的に多様化や分散化が進むはずだ。事前・事後学習も行い、学びの旅を充実させてほしい」と指摘している。