全国で教員のなり手不足が課題となる中、高知県教育委員会が実施した今年の小学校教員採用試験で合格した280人のうち、10月末現在で7割を超える204人が採用を辞退したことがわかった。受験者は他の自治体の試験と併願する人が多く、高知以外の希望する勤務地が決まると離れていくケースが後を絶たない。県教委は「高知で働くことへの魅力を高め、辞退者を少しでも減らしたい」と、情報発信や試験の種類を増やすなど工夫している。(小野温久)
高知県庁
県教委は多くの優秀な人材を確保するため、今年は採用試験を文部科学省の標準日(6月16日)より早い6月1日に高知市と大阪府吹田市の2会場で実施。小学校教員(募集人員130人程度)には578人が応募し、前年より80人多い280人が9月に合格した。
その後、他都道府県の採用試験の合否が判明するにつれて辞退者が続出。10月下旬には13人を追加で合格とした。ここ数年、合格者の約7割が採用を辞退しており、県教委は昨年12月、初めて2次募集を実施するなどして教員を確保。今年も12月15日に2次募集試験を行う。
長岡幹泰教育長は10月29日の定例懇談会で、「高知県の教員になりたいと強く考えてもらえるように(県教委のユーチューブチャンネル)『とさまなチャンネル』などで魅力を発信していく。働き方改革や若年教員のサポートも強化していきたい」と話した。
全国で激しさを増す教員の獲得競争に対応し、県教委も対策に力を入れている。昨年から始めた採用試験の一部を大学3年生が前倒しで受ける「青田買い」の試験を今年も2次募集と同日に開催。現職や元教員を対象にした採用試験を9月に実施し、来年1月にも予定する。県の移住促進担当とも連携してU・Iターンの誘致も図るという。
一方で、文科省が来年の採用試験を前倒しして、5月11日を標準とするよう都道府県に通知したことについて、長岡教育長は「学生の教師になる意識が固まらない状態であったり、大学実習のカリキュラムへの影響もあったりする」と懸念し、「(試験を受ける)臨時教員には年度当初の学校業務が忙しい時期とも重なり、負担になる。また、他県と試験日が重複する恐れもある」と、さらなる前倒しには慎重な姿勢を示した。