政府は、博士号の取得を希望する学生を支援するため、大学院を設置する全ての大学に対し、博士課程に関する情報の開示を義務づける方針を固めた。国際的に技術革新競争が激化する中、日本では博士課程に進学する学生が減少しており、実態を開示して学生の不安を解消し、博士人材の増加につなげる狙いがある。

文部科学省

 公表を義務づける情報は、留年率や中途退学率、修了後の進路状況、標準年数で博士課程を修了した学生の割合などを検討している。文部科学省の中央教育審議会大学分科会で了承を得た上で、学校教育法施行規則を今年秋にも改正する方針だ。大学はインターネットや刊行物で情報を公開する。

 文科省によると、博士課程の入学者数(留学生を除く)は、2003年度の約1・8万人から23年度には約1・5万人に減少した。

 博士課程の修了までに標準の3年を超過する割合は人文・社会科学系で約8割、理学や工学でも約4~5割に達している。博士号取得に要する年数が長いことから、学生は重い授業料負担を強いられ、将来の見通しを立てづらくなる問題が指摘されている。博士課程の情報開示が進めば、大学側が一定期間内の修了に向けて指導に努めることなどが期待される。

 同省では今年3月、博士人材活躍プランを策定し、人口100万人あたりの博士号取得者数を40年に約3倍とする目標を掲げている。産業界に博士人材の採用拡大や処遇改善を求めるなど、博士課程の進学希望者を後押しする施策も進めている。