学校新聞を発行する「新聞部」。みんなの学校にはあるだろうか? 埼玉県東松山市にある県立松山高校の新聞部は、部員数なんと118人!! 野球部などのいわゆる「王道部活」を差し置いて、校内No.1の規模なのだが、数年前までは廃部の危機にあったというから驚きだ。驚異の復活劇と、人気の秘密に迫った。(読売中高生新聞編集室 鈴木経史)

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6月に引退した3年生を含めると部員は130人を超える!(松山高校新聞部提供)

部員ゼロが続いていたが…

 新聞部の活動は、2019年の夏からストップしていた。3年生の引退で部員がゼロになり、休部状態が続いていたのだ。

 このままでは、いつかは廃部になってしまう。そんなピンチを救ったのが、21年4月に顧問になった国語科の矢野悠季先生だ。

顧問の矢野悠季教諭顧問の矢野悠季教諭

 当時、松山高校に着任したばかりだった矢野先生。新聞部がいつからあるのか、どんな活動をしていたのか、正直よくわからなかったが、「学校の歴史を記録する新聞部を、なくしていいわけがない!」と、強い使命感に
駆(か)
られたという。

 「新聞部を生まれ変わらせよう」と、4月から担任を受け持った1年生のクラスで生徒たちに声をかけるなど、先生自ら勧誘に
奔走(ほんそう)
。熱い思いは実を結び、一気に22人もの新入生が入部した。止まっていた時計の針が、ついに動き出した。

「やりたいことをやる!」部員は急増

 「新生新聞部」がモットーに
掲(かか)
げたのは「やりたいことをやる!」だ。学校新聞というと、校内のイベントや部活動の大会を取り上げるイメージが強いが、部員たちの興味のおもむくまま、学校外にも、積極的に取材に出かけている。

 3年の波多野礼央さん(17)は「気になっている人に会いに行ったり、注目の場所を直接訪れたりできる。部活なのに、自分たちの意思で学校の外にどんどん出て行けるのが、ほかの部活にはない面白さです」と、活動の魅力を語る。

 部員は22年度には約50人、23年度には約100人と急増。昨年7月の全国高等学校総合文化祭(総文祭)では、見事新聞部門の日本一に輝くなど、めざましい進化を
遂(と)
げている。

 今年度は66人が加わり、ますます盛り上がる新聞部。矢野先生は「部員たちのやりたいことには絶対にダメと言わない。失敗してもいいから、挑戦を後押しし続けたい」と話している。

著名作家、元プロ野球選手にインタビュー

これまでに発行された松山高校新聞これまでに発行された松山高校新聞

 新聞部が作る「松山高校新聞」は、A3判の両面2ページ。月3回程度発行され、全校生徒約950人に配布されるほか、校内にも掲示されている。

 毎号テーマを決め、特集やインタビューを組んでいる。取材対象はすべて部員たちの提案で決め、そのジャンルも
多岐(たき)
にわたる。

 例えば、地元・埼玉県が本拠地のプロ野球・西武ライオンズの元選手にスポーツ上達のコツを聞いたり、ドクターヘリに乗り込んで救急医療の現場に迫ったり。ラーメン店が集まるイベントの裏側を「食リポ」つきで紹介する企画や、小説家、重松清さんへのインタビューなど、プロ顔負けの特別な取材も実現させてきた。

 もちろん、先生へのインタビューや部員のオススメ本の紹介など、学校生活に役立つ身近な情報も盛りだくさんだ。学校行事などを速報する号外「空は晴れたり」も制作していて、昨年度に発行した新聞は計99号にものぼる。

 100人を超える部員が力を合わせて充実した紙面を作るためのコツは「分業制」にある。〈1〉取材班〈2〉ライター班〈3〉IT班〈4〉写真班の4班に分かれ、作業を分担しているのだ。

 前部長で3年の本郷駿さん(18)は「しゃべるのが苦手でも、文章が上手な人や、パソコンの知識が豊富な人もいる。得意分野を生かして、役割を補い合いながら活動できるのが、新聞部の魅力です」と語る。

各部員の役割は…

▽取材班

<取材班>取材のときは、相手の話に笑顔で相づちを打つのがポイントだ<取材班>取材のときは、相手の話に笑顔で相づちを打つのがポイントだ

 取材相手に直接質問をするのが仕事。初対面でもスムーズに会話し、的確に質問をぶつけるコミュニケーション能力が自慢。取材の日程調整なども担う。

▽ライター班

<ライター班>メモを見ながら記事を練っていく<ライター班>メモを見ながら記事を練っていく

 取材班が聞いた話をもとに記事を書く。インタビューにも同行し、現場では誰より真剣にメモを取る。文章力には自信のあるメンバーがそろう。

▽IT班

<IT班>専用ソフトで紙面のレイアウトを決めていく<IT班>専用ソフトで紙面のレイアウトを決めていく

 記事や写真などを紙面に
載(の)
せるため、パソコン上でレイアウトを考える。専用ソフトを使いこなす頭脳集団。文化祭では2日間に6回の号外を仕上げたことも。

▽写真班

<写真班>読者に伝わる1枚を追求する写真班<写真班>読者に伝わる1枚を追求する写真班

 取材した人物や場所を撮影するカメラマン。一眼レフカメラなどを使って、大事な瞬間を逃さず切り取る。プロ顔負けの機材を使うメンバーも!

総文祭に出場

 新聞部は、7月31日~8月5日に岐阜県で開催される総文祭に、新聞部門の埼玉県代表として出場することが決まっている。

 総文祭では、出場校が1年間に作った新聞の
出来栄(できば)
えが審査される。期間中、部員たちは現地の文化や自然などについてその場で取材をし、手書きの新聞も制作するという。

 初めて最優秀賞に輝いた昨年度に続き、今年度は2連覇を狙う。6月に部長に就任した根本翔大さん(17)は「プレッシャーはありますが、自分たちの興味を大切に1年間作り続けてきた新聞なので、最優秀賞を狙っていきたいです!」と意気込んでいた。

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