1月に起きた能登半島地震で被災地となった石川県輪島市で、市立小学校全9校を3校に再編する案が検討されていることが20日、分かった。奥能登地域では、少子化に加えて地震による人口流出で児童数が急減している。統廃合が人口流出を加速させる恐れもあり、過疎地で学校を維持する難しさが浮き彫りになった。

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 3校への再編案がまとめられたのは、児童数の減少に加え、近年、規模の大きい市中心部の小学校への就学を希望する子が増えていることや、地震で損傷した全校を修繕する財政的余裕がないことが理由だ。

 再編案では、9校ある小学校を市内3地区(中央、西部、東部)に1校ずつへと集約する。中央地区(現6校)と西部地区(現2校)は、新校舎を建てるなどして各1校に統合。東部地区は唯一の町野小学校を存続させた上、隣接する中学校と連携して小中一貫教育を行う「義務教育学校」への刷新などを検討する。市立中の統廃合は困難とした。

 統廃合の検討は、有識者らの委員会が昨秋から進めている。再編案は今月下旬に予定される会議で示される見込みで、今後、住民説明会や市議会での議論などを経て決定される。

 奥能登4市町(珠洲市、輪島市、能登町、穴水町)では地震後、人口流出が加速している。文部科学省の調査では、合計の児童数は、2014年5月は2497人だったが、昨年5月は1663人、地震後の今年5月は1179人(速報値)に急減した。輪島市以外で小学校統廃合の動きはないが、将来的に学校の維持が困難になる恐れもある。

 和光大の山本由美教授(教育行政学)は「学校には、避難場所や地域作りの拠点という役割もある。統廃合は、輪島市のような被災地ではなおさら、住民の合意形成を丁寧に図ることが不可欠だ」と指摘。「学校統廃合は、さらなる人口流出と過疎化を招く恐れもある。長期的な自治体経営への影響も考慮する必要がある」としている。