県立高校の授業などで生徒が使うタブレット端末を巡り、これまでの公費負担から保護者負担に切り替える香川県教委の方針が波紋を呼んでいる。国の交付金が見込めなくなったためだ。1台約7万5000円かかることから、県教委は全ての高校生に一定額を支援する方針を打ち出すも、無償貸与の継続を求める保護者らの署名活動が起きている。(黒川絵理)

学校で使われるタブレット端末の例

 「子どもが3人おり、7万5000円の負担に驚いたし、大変だと思っている」。6日、高松市の福本由紀子さん(41)は1万5216筆の署名を県教委に提出し、こう訴えた。署名を受け取った県教委高校教育課の長林真司課長は約20分かけて、これまでの経緯などを説明した。

 県教委では、国が2019年に発表した児童生徒が1台ずつ端末を使う「GIGAスクール構想」を受け、国からのコロナ対応の交付金やリース制度で端末を準備。保護者負担で先行して整備していた高瀬、丸亀、観音寺総合の3校を除く26校について、22年度以降、全生徒に無償貸与してきた。

 しかし、来年2月以降、リースの端末は順次期間が満了し、国の交付金も使えないとして、今年に入り、25年度新入生からは入学時に保護者負担で購入を求めると表明した。推奨機種は高性能で比較的安価だとして、「クロームブック」で本体代金や保証料、アプリの導入費なども含め、1台約7万5000円を想定している。

 同課は保護者負担とする理由を「高校は義務教育ではなく、個人で使う物品は個人負担が基本」とし、「無償貸与はコロナ禍での特例的措置だった」としている。今夏に開かれた新入生向けの各校説明会で、保護者にチラシを配り、理解を求めたという。

 一方、福本さんは「学年間で差が生まれ、不平等になる。行政は教育にお金をかけてほしい」として9月、ネットや街頭での署名活動を始めた。

 県教委は10月、一定額を支援する方針を明らかにした。これまで保護者負担としていた県立3校や私立高も含め、全生徒を対象にする。支援額については、高松市立高松一高で23年度から3万円を補助していることなどを参考にするとしている。また、経済的に困窮している世帯には無償貸与する制度も検討。ただ、同課は支援の詳細については「調整中」としている。

 学校現場に欠かせない端末について、全国での対応は分かれている。文部科学省によると、今年5月時点で、公立高の端末を24都道府県は保護者の購入を原則とし、23府県は原則、公費負担としている。

 福本さんらは署名活動を続けるといい、「もっと保護者の意見を聞いた上で、県教委に決めてほしい」と訴えた。

 長林課長は署名の提出を受け、「県民の声の重さを感じた。特に中学3年の保護者にはできる限り早く支援内容を伝えられるようにしたい」と話した。