薬を4種類くらい飲み、もう1回寝て、血圧が上がり始めた昼過ぎから、学校に行くような生活でした

 中学1年の3学期、体にだるさを覚え始めました。毎朝、頭痛や吐き気に襲われ、病院で検査をすると「起立性調節障害」と診断されました。思春期に発症するケースが多く、自律神経の乱れで立ちくらみや
倦怠(けんたい)
感などを引き起こす病気。朝、目が覚めても起き上がれないのです。鉄剤や血圧の薬を4種類くらい飲み、もう1回寝て、血圧が上がり始めた昼過ぎから、学校に行くような生活でした。

 この病気は、見た目が変わるわけではないので、なかなか周囲に理解されにくく、「サボり」といった誤解を受けやすい。小学4年生から始めたバレーボールを中学校の部活で続けていたのですが、症状が重く、運動も制限されました。中1の終わり頃に、バレー部の顧問に休部を伝えた際に、「怠けているだけだろ」と心ない言葉を浴びせられました。

 朝起きられない分、夜は目がさえて眠れないことも多かった。新聞配達のバイクの音が聞こえると、「今日も眠れなかった」と気持ちが沈みました。

 ある晩、寝られずにスマホを見ていると、母親に「もっと頑張りなさい」と言われ、口論になりました。朝、起きられずにけんかになって、鏡を投げつけられたこともありました。母親は病気のことを理解してくれていましたが、色々と思うところがあったのだと思います。

オーディション機に、クラスの女子から無視

母が味方してくれなかったら、引きこもりになっていたかもしれません母が味方してくれなかったら、引きこもりになっていたかもしれません

 中2になっても症状は改善せず、ベッドで横になりながらスマホを見ていると、芸能事務所やファッション雑誌のオーディション情報がよく目に留まりました。「私もやってみようかな」と軽い気持ちで受け始めました。

 その一つが夏休みにあり、最終審査まで進みました。それをSNSに載せたところ、クラスメートに見つかってしまいました。夏休みが明けてすぐ、スクールカーストの上位にいる「1軍メンバー」5人ほどを中心に、クラスの女子全員から無視されるようになりました。私も元々はその一員でした。でも、「病気で学校に来られないのにオーディションは受けられるんだ」と面白くなかったのでしょう。「自分より目立っている」という妬みもあったと思います。それからは教室で居心地が悪くなりました。病気で体調も優れず、思うように登校できなかったこともあり、全く登校しなくなりました。

 この時は、母親も「無理して行かなくてもいい」と味方してくれました。一緒にカラオケや食事に行ったり、渋谷で買い物したり、とにかく私を外に連れ出し、気を紛らせてくれました。それがなかったら、引きこもりになっていたかもしれません。

 担任の先生は事務的に話を聞いただけで、力になってはくれませんでした。学校にある相談室にも勧められて行きましたが、カウンセラーが親に言ってほしくないことも伝えてしまうなど、信用できませんでした。

クラスで“孤立”も…学校の友人には固執せず

しゃべる仲間がいないのはきつかったですねしゃべる仲間がいないのはきつかったですね

 芸能事務所に所属してダンスやウォーキングのレッスンを受けているうちに、友達ができ始めました。芸能事務所やSNSなども通じて新しくできた友達の中には、同じようにいじめを経験している子も結構いて、「じゃあ、別に気にしなきゃいいのか」と思えるようになりました。学校の友達との関係を、「価値観が合わない」と割り切れるようになり、無理に合わせようとしなくなることでストレスも減りました。

 3学期からは、高校進学を考えて出席日数を増やそうと、6時間目だけ学校に行くようにしました。母親に車で待っていてもらい、授業が終わると、一緒に帰る毎日でした。どこから聞いたのか、「モデルやっているんでしょ」と、興味本位で声を掛けてくる男子はいましたが、教室では孤立し続け、ずっと机に突っ伏して寝ているだけ。やはり、しゃべる仲間がいないのはきつかったですね。

頑張りすぎないこと…「6割くらい」の力加減で

がんばりすぎない!!がんばりすぎない!!

 いじめられていた時期は、長い人生からみると、ほんの一瞬かもしれません。それでも当時はつらかった。中学や高校の時は、学校が生活の全てになってしまいがちですが、私の場合は学校以外に居場所があったことで、何とかなったと思います。学校がダメならば次の居場所を探せばいいんです。

 いじめは、いじめる側が100%悪いのは間違いない。ただ、私も当時、友達との接し方を少しだけ変えていれば、違ったかもしれません。もう少し自分と向き合っていれば、周囲の対応も変わったかもしれないと今になっては思います。

 中学生の頃に同性からの妬みを知ってしまい、大人になった今でも、特に女性との初対面は警戒します。2人きりになるのも苦手です。「本当は何を考えているのかな。うわべを取り繕っているだけかも」と考えてしまう。自分とそりが合わない人も少なくありません。でも、「この人はこういう考えなんだ、へえー」と緩く捉えればいい。頑張って好きになってもらおうと考えないことです。無理して仲良くなっても、その関係は結局、長続きしないと思います。

 自分が好きなことや楽しいことは頑張ればいい。でも、他のことは全て、人間関係も含めて頑張りすぎないこと。6割くらいの力加減でいいと思います。失敗しても仕方ない。成功したらラッキーくらいの気持ちで、気楽にいきましょう。(松本将統)

 ◇みりちゃむ 本名・大木美里亜。埼玉県出身。ユーチューブ番組の出演をきっかけに、「口
喧嘩(げんか)
最強ギャル」としてブレイク。数多くのバラエティー番組で活躍するなか、昨年度、放送されたNHK連続テレビ小説「おむすび」に、平成のギャル役として出演して注目を集めた。

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